【沼津市】日本の住居にマッチする独自の作品を追求するステンドグラス作家木村洋介さん

ステンドグラス作家 木村洋介

2025年5月に「omusubi」で開催された木村洋介個展「懐 -kai-」

2025年5月、内浦三津のギャラリー兼コミュニティスペース「omusubi」で個展を初開催した木村洋介さん。築100年を超える建物ならではの温かな雰囲気に作品が自然に溶け込み、多くの来場者の心を掴みました。今回は、沼津市内で創作活動を続ける木村さんのアトリエを訪ねました。

ステンドグラス作家 木村洋介

木村さんのアトリエに回収された昭和型板ガラス

沼津市で生まれ育った木村さんは現在32歳。大学卒業後、ゲストハウス運営に携わりながらグラフィックデザイナーとして活動し、2020年からステンドグラス作品の制作を始めました。作品に使われているのは「昭和型板ガラス」。表面に刻まれた模様によって光が個性を持ち、見る人の心に温もりを伝えます。しかしこの昭和型板ガラスは現在は製造されていません。平成生まれの木村さんがこのガラスに強く心を動かされたのは、祖父母が営んでいた商店の解体に立ち会った時。「この素材を残していきたい」という想いが芽生えたといいます。

ステンドグラス作家 木村洋介

実際に光を通しながら、ステンドガラス作品の魅力について教えていただきました

木村さんの作風は、鮮やかな色彩が印象的な西洋のステンドグラスとは異なり、日本の住居に調和する落ち着いた雰囲気が特徴です。この作風になったきっかけは、鎌倉のゲストハウス「亀時間」を訪れた際、「日本の家に似合うステンドグラスを、日本人の感性で作ってみたい」と感じたそうです。

ステンドグラス作家 木村洋介

ガラスを切り出すための型紙。緻密で細かいピースで構成されるのは、グラフィックデザイナーでもある木村さんならではの作風。

木村さんの作品では色彩はアクセントとして最小限にとどめられ、さまざまな模様を持つ昭和型板ガラスを組み合わせて光の表情を変化させることで、見る人の心に“色”を想起させます。「昭和型板ガラスは模様によって白っぽくなったり透明になったり、反射によっても光の通り方が変わるのが魅力の一つですね」と話します。

ステンドグラス作家 木村洋介

「思い出の風景・西伊豆での釣り」という依頼を元に制作したオーダーメイドパネル。「個展 懐-kai-」を経て、さらにこの作風の表現手法に磨きがかかったという(画像提供:木村洋介様)

現在、木村さんが手がけているのは、omusubiでの個展をきっかけに依頼を受けたオーダー作品です。依頼者が語る思い出の風景に共感し、自らも実際に現地を訪れて光や空気を感じ取りながら下絵を描くそうです。「作品を届けたときに喜んでもらえることが一番うれしいですね。私の作品で、手にした人の人生が少しでも豊かになれば」と笑顔を見せます。

ステンドグラス作家 木村洋介

「思い出の風景・西伊豆での釣り」の制作風景

また今の木村洋介さんは、新規の受注を一時停止中。理由は、11月から1年間のワーキングホリデーでニュージーランドへ向かうためです。「学生時代に一人旅をしたとき、現地の人たちの自然体な生き方に惹かれました。もう一度あの光や空気を感じたくて。農場で働きながら、制作も続ける予定です。自分と向き合って、そして純度を高めたいですね」と話してくれました。

ステンドグラス作家 木村洋介

自らの作品を手にしながら、創作への想いを語る木村洋介さん

今後は、ステンドグラス作家として自らが培った経験を通じて、出会った人たちの人生を照らす存在になりたいという木村さん。昭和型板ガラスが光にさまざまな表情を与えるように、木村さん自身も出会う人々の心に温かな彩りを灯していく存在になりそうです。

(取材日:2025年10月21日)

片浜北公園(取材場所)はこちら↓

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