【沼津市】「スカンジナビア号の物語」トークイベントが5月17日に開催されました
スカンジナビア号のトークイベント「スカンジナビア号の物語」が、2025年5月17日(土)、内浦地区センターにて開催されました。4名の講師による講演に、170名以上の参加者が耳を傾けました。
スカンジナビア号は、1925年にノルウェーのベルゲンライン社がスウェーデンのイェータ・ベルゲン造船所に発注し、1927年に誕生した豪華客船です。クルーズ船として活躍していましたが、第二次世界大戦中にはドイツ軍に接収され、Uボート士官の娯楽施設として使用されたこともあります。1951年にはスウェーデンのクリッパーライン社に売却され、1969年には日本に渡り、1970年に沼津・木負でフローティングホテル「スカンジナビア」として開業。1999年から2005年まではフローティングレストランとして営業しました。その後、スウェーデンのペトロ・ファースト社に売却されることが決まり、2006年8月31日にタグボートに曳航されて沼津を離れ、航海の途中に和歌山県沖で沈没しました。
最初に登壇したのは、信州大学名誉教授の伊藤稔さんです。「スカンジナビア(旧ステラポラリス)の歴史と功績」と題し、この船の歴史を詳しく解説しました。冒頭では、日本とヨーロッパの船の文化の違い、ヨーロッパにおける「ヨット」がゴージャスな遊びのための船であること、また伊豆半島が軽野神社(伊豆市)やヘダ号など、日本の造船史において重要な場所であることなどが紹介されました。

元気な語り口で沼津の歴史を語った沼津史談会副会長の長谷川徹さん
続いて登壇したのは、沼津史談会副会長の長谷川徹さんです。「白い貴婦人木負着岸ごろの沼津」と題し、昭和30年代からスカンジナビア号が木負に着岸していた頃の沼津を振り返りました。「皆さん知ってますか〜?」という元気な掛け声とともに語られる沼津の歴史に、会場では多くの人が懐かしさを感じていました。

スカンジナビア号の舵を握った幼い頃の鈴木香里武さん
3人目は、岩壁幼魚採集家の鈴木香里武さん。駿東郡清水町のサントムーン柿田川にある「幼魚水族館」の館長も務めています。幼少期にスカンジナビア号に宿泊しながら魚の採集に没頭した経験を「顔を上げるとスカンジナビア号がありました」と語り、その体験が自身の人生において大きな転機となったことを紹介。幼い頃の体験が持つ意味の大きさも伝えていました。

テクニカルダイビングを行う「スティンググレイ・ジャパン」の野村昌司さん
最後に登壇したのは、プロダイバーの野村昌司さんです。野村さんは、現在水深73〜74メートルの海底に眠るスカンジナビア号の様子を、貴重な映像とともに紹介しました。

野村さんから解説されたスカンジナビア号に潜る危険
野村さんはテクニカルダイビングという高度な技術を用いて調査を行なっています。通常のダイビング装備が20kg程度なのに対し、5本のタンクなど100kgを超える装備を使うこと、さまざまなリスクに適切に対処しながら調査している現場の様子も紹介しました。
スカンジナビア号は現在、砂地の海底で多くの生物のすみかとなっており、魚の群れにより船体が見えないこともあるそうです。その神秘的な姿が映像で紹介され、参加者の関心を集めました。

スカンジナビア資料館の前島希久也館長(右)とトークイベントを運営した皆さん
イベントの締めくくりには、「海のステージ」(内浦三津)にあるスカンジナビア資料館の前島希久也さんが登壇。この会を主催した前島さんの”海の仲間”の皆さんと共に、スカンジナビア号の元支配人・安楽博忠さんの遺志を引き継ぐ思いを語り、イベントを締めました。
沼津からスカンジナビア号が姿を消して20年。多くの人々が、改めてあの白く美しい船体を心に思い起こした一日となりました。
スカンジナビア資料館がある「海のステージ」はこちら↓